専任技術者とは専門的知識を持ち合わせたプロフェッショナル
専任技術者とは、請負工事に関しての専門的な知識を習得した者を指し、請負った工事を安全かつ健全に遂行するための指導や監督が求められる立場の技術者です。
建設業許可を受ける営業所毎に配置が義務付けられ、的確な工事の指導に努めなくてはなりません。
経営業務の管理責任者と同様に常勤専従である者が求められており、他社との掛け持ちや短時間労働者などにおいては就任することができません。
また、他社の役員等に就任をしている場合でも、非常勤であることが証明できれば就任することができる経営業務の管理責任者と異なり、他社の役員などに就任をしている者については専任技術者となることができません。
旧建設省(国土交通省)の告示などにおいて、各工事(許可業種)毎に専任技術者として認められる資格等が列挙されており、これに該当する者を工事に必要な専門的な知識を習得した者として営業所毎に配置をしなくてはならないとされていますが、この他、一般建設業許可においては実務経験による就任なども認められていますから、一般建設業許可における専任技術者の条件を見ていきましょう。
一般建設業許可ではどのような者が専任技術者となれるのか
- 国家資格など一定の資格を有する者
- 許可を受けようとする建設業許可業種毎に法で定めた指定学科を卒業した者で、この建設業許可業種について高校卒業後5年以上もしくは大学(短期大学・高専を含む)卒業後3年以上の実務経験を有する者
- 10年以上の実務経験を有する者
- 国土交通大臣特別認定者
これらのいずれかの要件を満たす者が専任技術者として就任することができます。
国家資格など一定の資格を有する者
専任技術者として配置される際に、一番、推奨されている方法です。
旧建設省令に定められた国家資格等を有する者は、この資格を以て専任技術者となることができます。但し、一部の資格については資格保有に加えて一定の実務経験を求められるものもありますので注意してください。
建築工事業の専任技術者となれる国家資格等
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(建築)
- 一級建築士
- 二級建築士
※ その他の許可業種の国家資格等は別ページをご覧ください。
許可を受けようとする建設業許可業種毎に法で定めた指定学科を卒業した者で、この建設業許可業種について高校卒業後5年以上もしくは大学(短期大学・高専を含む)卒業後3年以上の実務経験を有する者
要は工業高校や工業大学などの建設業許可業種毎に指定されている学科を卒業している方で、実務経験もあるよという方を指します。
この実務経験が高校卒業の場合で5年、大学卒業の場合で3年と期間に違いがあるだけです。
例えば、建築工事業の専任技術者となりたい方がどこかの工業高校の建築課を卒業している場合には、卒業後に建築工事業を請負っている会社などで工事に携わっていたなどの経験が5年以上あれば専任技術者となることができます。
これが大学を卒業している方で建築工学科などを履修されていた方であれば実務経験が3年で足りるよというものです。
次に説明をする10年の実務経験は学歴など一切を問われませんので、事実として実務経験があれば就任ができるということになりますが、なかなか10年以上の実務経験となるとハードルが高くなるものです。
実は工業高校を卒業している奴が居たなんてケースも良くありますから、今一度、従業員さんの履歴書などを確認してみるのも良いかもしれませんね。
指定学科一覧 | |
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土木工事業、舗装工事業 | 土木工学、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業、大工工事業、ガラス工事業、内装仕上工事業 | 建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、塗装工事業、解体工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業、電気通信工事業 | 電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業、水道施設工事業、清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業、鉄筋工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業、消防施設工事業 | 建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
※ 表中の土木工学には、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含みます。
10年以上の実務経験を有する者
この要件は単純明快です。
許可を受けたい建設業許可業種において10年以上の実務経験を有しているものであれば、資格などに一切関係なく専任技術者として就任することが可能です。
ここで言う実務経験とは、建設工事の施工に実際に携わった者は勿論のこと、工事を指揮、監督したものや見習いとして技術習得のために参加した期間も含まれます。
また、発注者側(工事の注文を出した側)における設計業務や現場監督しての経験も含まれるとされています。
逆に実務経験として含まれない典型的なものとしては、事務員としての経験や経理担当者としての経験は含まれません。
この10年以上の実務経験にて専任技術者を配置したい場合の注意点として、あくまでも実務経験については過去の書面等にて証明をすることになります。これまで請け負ってきた工事に関する書面が何も無い場合などにおいては実際の経験があるにも関わらず専任技術者になれない場合もあります。
今後、実務経験による専任技術者の配置を検討されている場合には、証明書類が必要であることを理解し、日々の事務処理をされると良いものと思います。
なんと10年の実務経験には特例があります
実は10年の実務経験には特例が存在し、「振替」という実務経験の計算方法が存在します。
通常では実務経験により専任技術者として就任するためには、許可を受けたい許可業種についての実務経験が求められますが、一定の許可業種についてはその振替による実務経験の計算が可能となっております。
まずは、振替ができる建設業許可業種を確認してみましょう。
一式工事 ⇒ 専門工事への振替
- 土木一式工事 ⇒ とび土工工事業、しゅんせつ工事業、水道施設工事業、解体工事業
- 建築一式工事 ⇒ 大工工事業、屋根工事業、内装仕上工事業、ガラス工事業、防水工事業、熱絶縁工事業、解体工事業
一式工事からの振替はあくまでも一歩通行です。個々の専門工事の実務経験を一式工事の実務経験として振替はできません。
専門工事 ⇔ 専門工事での振替
- 大工工事業 ⇔ 内装仕上工事業
- とび・土工工事業 ⇔ 解体工事業
専門工事同士の振替は双方の経験を振替することが可能となっています。
国土交通大臣特別認定者
あまり、この要件をクリアして専任技術者に就任されるケースは少ないと認識をしておりますが、公表されているものとしては以下のようなものがあります。
- 指定学科に関し、旧実業学校卒業程度検定に合格後5年以上、旧専門学校卒業程度過程に合格後3年以上の実務経験を有する者
- 学校教育法による専修学校指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者で専門士または高度専門士を称する者
- 学校教育法による専修学校指定学科卒業後5年以上の実務経験を有する者
- その他大臣が個別の申請に基づき認めた者
専任技術者は営業所毎に常勤専従でなければならない
専任技術者は経営業務の管理責任者と同様に営業所に常勤にて勤務する者でなければならないとされています。
要は、営業時間内においては常時、営業所に常駐しており知識を持ち合わせた技術者としての管理に努めなくてはなりません。
また、経営業務の管理責任者との大きな違いは、営業所毎に専任技術者の配置が求められるという点です。
例えば、本社(主たる営業所)と支店(従たる営業所)がある会社において、その両方の営業所において建築工事業を請負う場合には一級建築士などの専任技術者としての要件を満たす者をそれぞれ配置する必要があるのです。
これが3ヶ所、4ヶ所の営業所と増えていく場合にも同様ですから、多くの営業所にて請負を行いたい場合には専任技術者の確保だけでもそれなりに大変かと思います。
近年、会社が補助などを出して技術者の知識向上を目的に資格取得の機会を促している企業などがありますが、これらの取り組みの背景には人材不足による専任技術者や主任技術者、監理技術者などが不足することを予防している目的もあると聞きます。
せっかく建設業許可を受けたにも関わらず、専任技術者が不在となった際には、そのまま許可を維持することはできません。
勿論、代わりを務めるだけの資格等を有している方がいらっしゃれば、専任技術者の交代で足りますので許可を維持することはできますが、なかなかそうも行かないことが多いのではないでしょうか。
長く建設業許可を維持するためにも、様々なパターンを検討していただき、リスクに備えることも大切であるとご提案をさせていただいております。